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COLUMN

生成AIと資料があれば半自動でチャットボットが作れるという幻想

生成AIの台頭により、ビジネスに大きな転換期が訪れています。生成AIの活用例として、PDFがあれば簡単にチャットボットを作れるという話を耳にすることはないでしょうか。PDFをナレッジとしたチャットボットの開発は可能ですが、注意すべき落とし穴があることはご存じでしょうか。

生成AIの台頭により、ビジネスに大きな転換期が訪れています。AI技術は、業務効率化、コスト削減、新たなサービスの創出といった多方面で企業に恩恵をもたらします。特に、顧客サービス、製品開発、マーケティング戦略などが大きく変化しています。

生成AIで訪れるビジネスの転換期

生成AIの登場により、従来の定型的な回答しかできないチャットボットと異なる、まるで人が対応するかのような柔軟性を持ち合わせたチャットボットが登場しています
製品開発の分野においては、生成AIを用いて消費者の嗜好や市場のトレンドを迅速に分析し、よりターゲットに合った製品が開発できるようになりました。マーケティング分野では、AIによるデータ分析がパーソナライズされた広告戦略の策定を助け、効果的な顧客獲得につなげる可能性を秘めています。

生成AIは内部の業務プロセスの自動化にも大きく貢献しています。例えば、文書の自動生成やデータ入力作業の自動化により、従業員は単調な作業から解放され、創造的かつ戦略的な業務に集中できるようになります。企業は生産性の向上を図るとともに、従業員の働きがいを高めることができるのです。

しかし、導入にあたっては企業文化や従業員のスキルセットの変化も必要となります。AI技術の適切な理解と活用方法の習得、組織内での適切な位置づけと運用が重要です。企業はビジネス変革に対応するための戦略的な計画と、柔軟な適応が求められます。

生成AIの活用方法として、「PDFがあれば簡単にチャットボットを作れる」という話を耳にすることはないでしょうか。実際、PDFをナレッジとしたチャットボットの開発は可能ですが、注意すべき落とし穴があることはご存じでしょうか。

すでにある資料を用いて独自チャットボット開発しようとする際の落とし穴

生成AIにPDFを組み合わせた独自のチャットボット開発は、一見シンプルなようにみえますが、実際には多くの落とし穴が存在します。利用するPDFがなんでも良いかと言えばそんなことはなく、適切な資料とデータ、そして専門的な知識が不可欠です。

資料の品質とボリュームが適切であるか

チャットボットの性能は、読み込ませる資料の品質に依存します。内容が不十分だったり誤った情報を含んでいたりすると、チャットボットが誤った回答をしたり、無関係な回答をするリスクが出てきます。具体例としては資料内に新旧の情報が混在した場合に、AIが正確な情報を発見できない場合があります。

継続的なメンテナンスができるか

生成AIを用いたチャットボットは、一度設定したらそれで完了というわけではありません。市場の変化、ユーザーの行動の変化、新しい情報の出現に対応するために、継続的なデータの更新が必要です。作って終わりではなく、最適な回答をさせるための情報のメンテナンスが不可欠です。

生成AIの特性を理解しているか

生成AIの運用には、専門的な技術知識が必要です。AIの挙動を正確に理解し、適切な回答をできるよう資料やAIを最適化するスキルと経験が求められます。生成AIは柔軟性がある一方、思考プロセスがブラックボックス化しがちなため、AIがどのような特性をもっているか理解しておく必要があります。

これらの特性を十分に理解した上で、AIチャットボットの構築に取り組む必要があります。

雑な資料ではAIチャットボットも雑な回答しか返さない

繰り返しになりますが、AIチャットボット開発において、利用する資料には質と量の両面が求められます
不正確な資料は、ハルシネーションと呼ばれる誤った回答を引き起こすことがあり、ビジネスに悪影響を与える可能性があります。また、品質は充分でも情報量が不十分だと、ユーザーの多様なニーズに対応できずストレスにつながります。ユーザーの質問に対応できるだけの情報の質と量を持つ資料を用いることでようやく効果的に機能するAIチャットボットが実現できます。

AIチャットボットに利用する資料最適化のコツ

読み込ませる資料を最適化する際、情報の「チャンキング」(情報の分割と整理)について知っておく必要があります

大規模言語モデルなどの生成AIが情報を処理する際には、大量のデータを扱いやすい小さな「チャンク」に分割して処理しています。一般的に生成AIによって一度に扱える文字数には上限が設けられています。制限がある中で、チャンクはAIが情報を効率的に理解し応答を生成するための重要な要素です。

整理する際のわかりやすい形式としては、資料を「質問」と「回答」で対になる構成にする、「見出し」単位で情報をまとめることなどが挙げられます。逆に、1テーマが複数の見出しに横断して書かれていたり、時間の流れを伴う変化がある場合に、全体の流れを考慮して回答をさせることは難しくなってきます。

ChatGPTをはじめとする生成AIが直面している技術的な課題であり、この制限を理解し適切なデータ整備を行うことが重要です。

チャットボット開発に人間の介入が必要な理由

ここまでの内容でお気づきと思いますが、AIチャットボットの開発において、人間の介入は不可欠です。技術の進歩により多くのタスクが自動化されていますが、完全自動化には限界があり、特にチャットボットのような複雑なシステムを構築する際には、人間の視点が非常に重要です。

品質管理と最適化

多様なユーザーからの質問に対応するためには、精度の高いデータが必要です。人がデータの選定、品質管理、およびトレーニングプロセスの監視を行い、チャットボットの性能を最適化する役割を果たします。

倫理的・文化的配慮

AIチャットボットの応答には、倫理的および文化的な配慮が適切に行われるよう管理することが求められます。AIは時として、人が理解できないような突飛な回答をしてしまうことがあります。知見のある開発者・管理者が、不適切な応答や偏見を含む応答を減らすようコントロールする必要があります。

カスタマイズと特化

特定のビジネスや業界に特化したチャットボットを開発する場合、人間の専門知識が不可欠です。業界固有の知識や特定の顧客基盤に合わせたカスタマイズは、人間の介入によってのみ実現可能です。OpenAI社の利用ポリシーにおいても、人生の大きな決断につながる回答や、専門家の審査無しに法律や医療、財務などの分野での回答をさせることを禁じており、専門性が高いほど実装には慎重になる必要があります。

以上の点から、チャットボット開発において人の介入は不可欠です。人が適切なタイミングで介入することで、効果的で信頼性の高いチャットボットを開発することが可能となります。

現段階では外部の支援を受けることが近道

OpenAIのGPTsのように、非エンジニアでも独自のチャットボットを作成できる仕組みが登場してきており、利用開始にいたるまでのハードルは下がりました。しかし、ここまで触れた課題を考えると実用に向けてはまだまだ障壁があると言えるでしょう。これからAIを活用しようと考えている企業は、知見のあるシステム開発会社から支援を受けながらAIチャットボットの利用検討をすることをおすすめいたします

株式会社テンダでは、生成AI開発サービスを提供しております。ChatGPTの活用支援やGPTを活用した独自システムの構築など柔軟に対応しております。