COLUMN
行政での生成AI活用事例!デジタル庁が公開した検証報告から考えるAI技術検証
デジタル庁の生成AIの検証レポート「行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証の環境整備」からあるべきChatGPT等の検証環境・体制の作り方を考えてみます。
デジタル庁は、「行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証の環境整備」の報告資料公開しています。この資料は、2023年12月から2024年3月にかけて実施された、ChatGPTなどLLMを持ちいた技術検証プロジェクトの成果や投稿プロンプトをまとめたもので、生成AIの行政業務への導入効果と課題を具体的に示しています。
デジタル庁の技術検証のレポートからあるべき検証体制の作り方を考えてみます。
参考:2023年度 デジタル庁・行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証を実施しました
https://www.digital.go.jp/news/19c125e9-35c5-48ba-a63f-f817bce95715
もくじ
行政で生成AIを活用するための技術検証プロジェクトとは?
デジタル庁が開始した技術検証プロジェクトは、生成AIを用いた新たな業務支援の可能性を探る取り組みです。特に、生成AIの利活用による業務効率の向上を目指し、検証環境を整備して自治体や府省庁職員に提供しました。AIの適用効果や運用上の課題を詳細に分析し、行政業務に最適な技術的アプローチを模索しています。
技術検証プロジェクトの概要とその成果
行政業務に生成AIを取り入れるための技術検証環境を構築し、自治体や府省庁職員が現実の業務でその効果を体感できるようにしました。プロジェクトでは以下の3つを実施したとのことです。
検証環境の提供と運用
参加者に生成AIを活用するための実証環境を提供し、安定した運用を維持。
技術支援の実施
操作マニュアルや研修を通じて参加者へのサポートを強化し、効率的な運用を実現。
技術検証とフィードバックの収集
現場での検証結果をもとに、生成AIの実用性と今後の課題を抽出。
これにより技術検証基盤を13の府省庁と26の自治体から計767名が利用、共創PF Slack上で158人に提供しています。生成AIの業務活用の実態とその可能性を多角的に検証しました。
注目ポイントは検証環境
検証環境には、生成AIプラットフォーム「GaiXer」をベースにした検証基盤を用いています。要望に合わせて30階のアップデートを行っており、当時最新のLLMだったClaude 3 Sonnetなど10のLLMに対応しています。
他にも次のような機能が利用可能です。
機能 | 詳細 |
---|---|
Web検索RAG(当初機能) | 大規模言語モデル(LLM)と連携し、リアルタイムのWeb検索結果を反映する機能。 |
プロンプトテンプレート(当初機能) | 業務に特化したテンプレートを用意し、生成プロセスの効率化を支援。 |
機密情報チェッカー | 機密情報の入力にアラートを上げる仕組み |
Slack連携 | 質問応答の自動化を促進し、現場の問い合わせ対応を大幅に効率化。 |
また、運用面では、毎月の運用レポートや利用ダッシュボードを通じ、システムの稼働状況を分析。必要な改修を迅速に行う体制を整備しています。
具体的なユースケースとその効果
プロジェクトでは、生成AIを用いてさまざまなユースケースが検証されました。例えば、以下のような業務での結果が報告されています。
- パブリックコメント対応の改善: 提出された意見へ分類や論点整理などのタスクについては、補助的にAIを活用する事で対応品質の向上が期待できる
- 調達仕様書のラベリング: 特定項目へのタグ付け作業を自動化し、有用との評価を得るに至った。誤ったラベリングをすることもあったがプロンプト修正にて改善。
- 例による法令検索: 用例に基づく法令検索をすることで、作業時間の単純削減が期待できる、属人の検索ノウハウが一定不要となる、などの理由から運用持続への貢献が期待できる。
- 答弁ドラフトの自動生成: 過去の答弁データを活用し、新たな質問への応答案を生成。生成精度については限定的な結果に留まった。
行政での検証結果を踏まえて
デジタル庁による生成AIの技術検証プロジェクトは、行政業務の新たな可能性を示す重要な成果をもたらしました。業務効率の大幅な向上が見込まれる一方、データ整備やセキュリティ面での対策が今後の課題です。
生成AIの導入を検討する際には、十分な技術的検証と運用体制の構築が不可欠です。本プロジェクトで一定の成果が得られているのは、優秀な検証基盤を構築したのはもちろん、検証方法や課題を明確にしたり、検証環境に問題があれば適宜アップデートする体制作りに成功のヒントがありそうです。
生成AIの検証環境構築や技術サポートについては、受託開発やラボ型開発を手掛ける株式会社テンダにご相談ください。
参考:2023年度 デジタル庁・行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証を実施しました
https://www.digital.go.jp/news/19c125e9-35c5-48ba-a63f-f817bce95715