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シャドーITとは?潜むリスクとAI時代の新たな脅威への対策を解説
企業のDX推進で新たな課題となっている「シャドーAI」をご存知ですか?無許可のAI利用は重大な情報漏洩に繋がる恐れがあります。本記事では、シャドーIT・AIの具体的なリスクと、禁止するだけではない効果的な対策をIT担当者向けに分かりやすく解説します。

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、多くのIT担当者様や管理職の方々は、業務効率化とセキュリティ対策の両立に頭を悩ませていることでしょう。特に、近年急速に普及した生成AIは、便利な反面、新たなリスクを生み出しています。それが「シャドーIT」・「シャドーAI」の問題です。
従業員が会社の許可なく利用するツールが、思わぬ情報漏洩やコンプライアンス違反の引き金になる可能性があります。実際に、世界的な調査会社であるGartner社は「2030年までに多くの企業がシャドーAI由来の問題に直面し得る」と警告しており、もはや看過できない経営課題となっています。
(参考: https://www.infosecurity-magazine.com/news/gartner-40-firms-hit-shadow-ai/)
この記事では、まずシャドーITとシャドーAIの基本を改めて整理し、それらがなぜ危険なのかを具体的に解説します。さらに、単にツール利用を禁止するだけではない、現場の生産性を維持しながらセキュリティを確保するための実践的な対策をご紹介します。
もくじ
シャドーITとは?DXの陰で広がる課題
シャドーITとは、企業のIT部門が関知・管理していないデバイスやソフトウェア、クラウドサービスなどを、従業員が業務に利用している状態を指します。例えば、個人契約のオンラインストレージで業務ファイルを共有したり、無許可のチャットツールで顧客とやり取りしたりするケースがこれにあたります。
シャドーITが発生する背景には、「会社で導入されているツールが使いにくい」「もっと効率的に作業を進めたい」といった現場の切実な思いがあります。
善意から始まった行動が、結果として企業全体を危険に晒してしまうのが、この問題の難しいところです。管理外のツールは、セキュリティ対策が不十分であったり、退職者がアカウントを持ち続けて情報にアクセスできたりと、ITガバナンスの観点から多くの問題を含んでいます。

新たな脅威「シャドーAI」の深刻さ
シャドーITの中でも、現在最も警戒すべきが「シャドーAI」です。これは、従業員が企業の許可なく、文章生成AIや画像生成AIなどのサービスを業務で利用することを指します。
シャドーAIが従来のシャドーITよりも深刻なのは、機密情報を「入力」してしまうリスクが非常に高い点にあります。
例えば、会議の議事録要約のために社外秘の情報を含むテキストを生成AIに貼り付けたり、顧客リストをアップロードして分析させたりする行為は、入力したデータがAIの学習に使われ、外部に漏洩する直接的な原因となり得ます。
さらに、AIが生成したコンテンツの著作権問題や、不正確な情報(ハルシネーション)を鵜呑みにしてしまうことによる業務上のトラブルなど、AIならではの新たなリスクも懸念されています。

なぜシャドーIT/AIは危険なのか?具体的なリスク
シャドーITやシャドーAIを放置すると、企業は具体的にどのような危険に直面するのでしょうか。主なリスクは以下の4つに整理できます。
情報漏洩とコンプライアンス違反
最も大きなリスクは、機密情報や個人情報の漏洩です。他にも事業計画や技術情報、顧客データなど、企業の競争力に関わる重要な情報はいくつもあります。これらの情報が漏洩すれば、企業の社会的信用の失墜や、顧客からの損害賠償請求に発展する可能性があります。
マルウェア感染の危険性
安全性が確認されていないフリーソフトやオンラインサービスは、マルウェア(ウイルス)感染の温床です。従業員のPCが一台感染するだけで、社内ネットワーク全体に被害が広がり、事業継続が困難になるケースも少なくありません。
ITガバナンスの崩壊
IT部門が従業員のツール利用を把握できなくなると、誰が・どのデータに・いつアクセスしたのかという証跡(ログ)が追えなくなります。不正アクセスの検知が遅れたり、退職者のアカウントを削除し忘れて情報漏洩に繋がったりと、組織的な管理体制が機能不全に陥ります。
業務の属人化と非効率化
特定の従業員しか使えないツールで業務が進められると、その人が不在の際に業務が滞ってしまいます。これは他の事項に比べるとややリスク影響の度合いは下がりますが、業務プロセスの標準化を妨げ、組織全体の生産性を低下させる原因となります。

「禁止」だけでは不十分。現場と進めるシャドーIT対策
これらのリスクにどう立ち向かえばよいのでしょうか。重要なのは、単に「禁止する」という守りの姿勢だけでなく、現場の利便性を高める「攻めの対策」を同時に進めることです。
守りの対策:ルールの策定と実態把握
まずは、何が許可されていて、何が禁止されているのかを明確にするガイドラインを策定し、全社に周知徹底することが第一歩です。
AIの利用に関しても、入力してはいけない情報の種類(個人情報、機密情報など)を具体的に定めましょう。その上で、ネットワークのログ監視やアンケート調査などを通じて、社内のツール利用実態を定期的に把握する仕組みも必要です。
攻めの対策:代替ツールの提供と環境整備
従業員がシャドーITに頼るのは、多くの場合、公式ツールに不満があるからです。現場のニーズを丁寧にヒアリングし、セキュリティが確保された上で生産性を向上できる代替ツールを会社として提供することが、最も効果的な対策となります。
例えば、安全な生成AIサービスを契約し、正しい使い方を教育した上で全社に展開すれば、従業員は安心してその利便性を享受でき、シャドーAIのリスクを大幅に低減できます。
現場が自律的に業務改善を進められるよう、ノーコードツールなどを活用して業務アプリを内製できる環境を整えることも、IT部門の負荷を減らしつつ、現場の満足度を高める有効な一手となるでしょう。

まとめ
DX推進の裏側で静かに広がるシャドーIT、そしてシャドーAIの脅威は、もはやどの企業にとっても他人事ではありません。これらの問題は、従業員の「もっと業務を良くしたい」という前向きな気持ちから生まれることが多いため、一方的な禁止は現場の意欲を削ぎ、DXの停滞を招きかねません。
重要なのは、シャドーIT/AIのリスクを正しく理解し、明確なルールを設ける「守りの対策」と、現場のニーズに応える安全なツールを提供する「攻めの対策」を両輪で進めることです。まずは自社の従業員がどのようなツールを使っているのか、その実態調査から始めてみてはいかがでしょうか。現場との対話を通じて、安全で生産性の高いIT環境を共に築き上げていくことが、これからの企業に求められています。



