COLUMN
GPTs/GemsからDifyへ?AI活用の次の一手、本番運用の基盤構築
GPTsやGemsでのAIアプリ活用、再現性や統制に課題はありませんか?本記事では、試作から本番運用へ移行する最適なステップとしてDifyを例に解説。AIアプリをスケールさせるための移行のタイミングや具体的なメリット、ロードマップを分かりやすく紹介します。

手軽に始められるプロンプト運用は、立ち上がりこそ速いものの、組織で広く使うほど再現性・統制・改善の仕組みが問われます。
次の一手としてGPTs/Gemsで利便性の向上を謀ってみた企業様もいることでしょう。
しかし、いざ使ってみると、
「ChatGPTのGPTsやGeminiのGemsを試してみたが、全社で本格的に使うには管理が難しい」
「誰がどのように使っているか分からず、社内普及が思うように進まない」
といった課題にぶつかってはいないでしょうか。
GPTsやGemsは手軽に導入できるツールですが、運用の見える化・ナレッジ管理・API連携の安全性を求めたい段階に入ったら、もう一段階本格的なAI開発プラットフォームに移して本番運用の基盤に載せるのが順当なステップアップです。
この記事では、GPTs/GemsからDify(ディフィ)などへの移行戦略について、その理由と具体的なステップを解説します。
補足:GPTsは、独自設定可能なカスタムバージョンの ChatGPTを指します。現在、公式サイト内での表記として用いられることはないですが、本記事においては通常のChatGPTと区別する意味で”GPTs”表記を用います。
もくじ
まずは“最短アプリ化”から。GPTsとGemsの役割
GPTsやGemsは、専門知識がなくとも自然言語で指示(プロンプト)を与えるだけで、特定のタスクに特化したAIアシスタントを作成できる画期的なツールです。役割指示と関連ナレッジを与え、すぐに使える形にできるのが最大の強みです。
多くの企業では、まずここで数日から数週間の実運用を通じて、どの指示・ナレッジ・入出力の型が成果につながるかを把握します。AI活用の「当たりの型」を見つけるための、高速なプロトタイピング期間と言えるでしょう。
この“当たりの型”が見えたら、次のステップとしてDifyなどに移行して再現性と拡張性を確保しましょう。

“本番運用の基盤”を築く
なぜDifyへの移行が次のステップとして最適なのでしょうか。
GPTs/Gemsは用途特化アシスタントを手軽に作る点では非常に優れていますが、社内での運用を考えると、利用状況を見たい、ナレッジデータを集中管理したい、複数LLMの組み合わせやAPI連携をしたいなど、様々な課題が出てきます。
例えば、ノーコード・ローコードの開発プラットフォームであるDifyであれば、これらの課題にも対応が可能です。プロンプト、ナレッジ、ワークフロー、外部API連携、アプリの配布、ログ分析までを統一されたUIのもとで扱えるため、特定の人にしか使いこなせないといった「属人化」を防ぎ、より標準化された運用を可能にします。
特に、自社サーバーで構築する構成を取れば、データの保存場所や社内セキュリティポリシーといった要件にも柔軟に対応できる点で、企業にとって大きな魅力です。

プラットフォーム移行を検討すべき「5つの兆候」
自社のAI活用がどの段階にあるのか、以下の兆候が複数見え始めたら、Difyなどへの移行を検討するタイミングです。
1.ログ追跡の必要性

利用者や問い合わせが増え、回答の根拠や利用状況の追跡が求められ始めた。
2.権限管理の複雑化

部署を横断した再利用や、権限設定が必要になり、単純な共有設定では管理しきれなくなった。
(Difyの場合、詳細な権限設定についてはエンタープライズプランで解決可能)
3.ナレッジ管理の本格化

社内文書などを参照するRAG活用が本格化して、ナレッジを集中管理する必要がでてきた。
4.システム連携の要求

外部SaaSや社内システムとの連携が増え、失敗時の処理、利用制限、監査といった安定運用のための仕組みが必要になった。
5.成果の可視化

経営層からAI活用の成果を示すよう求められ、品質評価やコストの可視化が必須になった。
これらの兆候は、AI活用が「個人の便利ツール」から「組織の業務インフラ」へと進化している証拠に他なりません。
小さく始めて確実に。Dify移行へのロードマップ
Difyの導入を検討する場合、スモールスタートで着実に進めるのが成功の鍵です。
1.型の棚卸し

GPTs/Gemsで成果が出た指示、入出力のサンプル、参照文書、外部連携の要件などをドキュメントに整理します。
2.最小スコープでの移植

Difyで同等のプロンプトとナレッジを再現し、まずは1部署・1業務など範囲を限定してパイロット導入します。
3.観測と改善

Difyのログや評価機能を活用し、回答の品質、ユーザー満足度、応答時間、コストなどを観測し、改善サイクルを確立します。
4.本番リリース

権限設定、運用手順、ナレッジの更新フローなどを明文化し、利用部門を段階的に拡大していきます。
このプロセスを経ることで、単発の“便利ツール”は、品質・速度・コストを管理できる再現可能な社内サービスへと昇華します。
まとめ
AI活用の導入期においては、GPTs/Gemsで“最短のアプリ化”を行い、当たりの型を見つけるアプローチが有効です。そして、その活用を組織全体にスケールさせる段階では、Dify等で“本番運用の基盤化”へと移行する。この二段構えは、スピードと統制を両立させるための現実的な戦略です。
小さく試して成果の出た型をDifyに移し、監査ログ、権限管理、ナレッジ更新、API連携といった企業利用に必要な機能を備えた本格運用に進めることで、AI活用の効果を損なうことなく全社展開できます。
株式会社テンダでは、お客様の業務やセキュリティポリシーに沿った、無理のない移行計画のご提案が可能です。AIアプリの導入設計やDifyへの移行、AIツールを内包した自社AIプラットフォームの構築などについて具体的なご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。




