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1000件の企業調査を1日で!AIによる反復作業の自動化、Dify活用術

突然の1000件規模の企業調査、手作業では限界がありますよね。本記事では、AI開発プラットフォームDifyを活用し、大量の反復作業を低コスト・高精度で自動化した活用例を解説します。DX推進のヒントにしてください。

AIを象徴する人型シルエットが膨大な企業情報を高速処理し、反復調査業務を自動化する様子を表すイメージ

「急遽、1000社分の企業リストについて、資本金や企業概要を調べてほしい」
ビジネスの現場では、このような大量の調査業務が突発的に発生することがあります。多くのご担当者様が、まずChatGPTのような生成AIの活用を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際に試してみると「一度に数件しか処理できない」「出力形式が安定しない」といった壁に突き当たり、結局は人手による地道な作業に戻ってしまった、という経験はないでしょうか。

単純な反復作業は、AIが最も得意とする領域のはずです。では、なぜ一般的なAIチャットツールではうまくいかないのでしょうか。

本記事では、ChatGPT単体では難しい大量の反復作業を、AI開発プラットフォーム「Dify(ディフィ)」を活用して、いかに効率的かつ高精度に自動化できるかを解説します。具体的な手順から、コストや精度といった気になる成果まで、実際の事例をもとにご紹介します。この記事を読めば、貴社の定型業務をDXする新たなヒントが見つかるはずです。

なぜChatGPTでは大量の反復作業が難しいのか?

ChatGPTやGeminiといった対話型AIは非常に優れていますが、大量のデータを一件ずつ処理するような反復作業には、構造的な限界があります。

第一に、一度の指示で処理できる情報量に限りがある点です。多くのAIモデルは、大量の企業リストを一度に読み込ませて、それぞれについて調査・出力するような複雑なタスクを安定して実行することができません。多くの場合、10〜20件程度の処理で止まってしまったり、指示を忘れてしまったりします。

第二に、出力の再現性が低いという問題です。同じ指示(プロンプト)を与えても、毎回完全に同じ形式で回答してくれるとは限りません。そのため、後工程でデータを集計・加工する際に、手作業での修正が必要になり、かえって手間が増えることにもなりかねません。

これらの理由から、一般的なAIチャットツールは「壁打ち相手」としては優秀ですが、業務プロセスに組み込む「処理装置」として利用するには、もう一工夫が必要となるのです。

対話型AIが大量処理に戸惑っている。後頭部の「?」が限界や迷いを示す人型AIのイメージ

解決策は「AI開発プラットフォーム」の活用

そこで有効なのが「Dify」のようなAI開発プラットフォームです。Difyは、ノーコードやローコードで、特定の目的に特化した独自のAIアプリケーションを構築・実行できるツールです。

Difyを使えば、単にAIに指示を出すだけでなく、「データを受け取る→AIで処理する→整形して出力する」といった一連のワークフローをシステムとして設計できます。

特に、CSVファイルなどを読み込んで、1行ずつ同じ処理を繰り返す「一括処理)」機能が強力です。ChatGPTでは難しかった「1000件のリストを1件ずつWebで調べて、結果を表にまとめる」といった作業の完全自動化が可能になります。

光を放つAIチップに四方八方から情報が集まり、Difyが多様なデータを効率的に処理・自動化する様子を表すイメージ

実践!Difyで1000件の企業調査を自動化する手順

では、具体的にどのように自動化するのでしょうか。ここでは、企業リスト(社名)から各社の「資本金」「企業概要」を調査する流れを、簡単なステップでご紹介します。

1.処理フローの設計

Dify上で企業名入力からAI調査、結果出力までのフローを図解で示したイメージ

Dify上で、「開始(企業名を入力)→LLM(AIに調査を指示)→終了(結果を出力)」というシンプルなフローを組み立てます。実行するAIにはGemini、オプションとしてGroundingの指定をするとインターネットの情報を反映した回答が得られます。

2.プロンプト(AIへの指示)の作り込み

パソコンでプロンプトを作成し、出力形式や項目順、条件を細かく指定してLLMの精度向上を図るイメージ

LLM(AIモデル)に対して、調査項目や出力形式を厳密に指示するプロンプトを作成します。「出力はCSV形式で1行のみ」「項目はこの順番で」「数値が見つからなければ”不明”と記す」といったルールを細かく定義することが、精度を高める鍵です。

3.入力データ(CSV)の準備

ビジネスマンたちが企業リストの項目をCSVファイルに貼り付けるなど、準備する様子を表すイメージ

調査したい企業リストを、Difyが読み込める形式のCSVファイルとして用意します。

4.Difyで一括処理を実行

CSVファイルをDifyにアップロードし、一括実行中で設定アイコンが周囲を回り、自動処理が進む様子を表すイメージ

用意したCSVファイルをDifyにアップロードし、「一括実行」を開始します。あとはシステムが自動で1件ずつ処理を進めてくれるのを待つだけです。

5.出力データの整形と最終確認

大きなPCモニタの前で、ビジネスパーソン二人が手元のPCやタブレットでCSV結果を確認し、最終チェックや手直しを行う様子を表すイメージ

処理が完了したら、結果をCSVファイルとしてダウンロードします。AIの出力結果には稀にフォーマットの崩れや情報の欠損が含まれることがあるため、最後にExcelなどで全体を確認し、簡単な手直しを行えば完了です。

この一連の作業により、手作業であれば数週間かかっていたかもしれない業務が、劇的に短縮されます。

今回は単発作業のため一部手作業を交えましたが、定期的に行うのであれば、ノーコードツールなどを組み合わせて業務アプリ化するのも良いでしょう。

驚きの成果は?コスト・時間・精度の比較

この手法で実際に3000社以上の企業調査を行ったところ、以下のような成果が得られました。

  • 時間: 実装から処理完了まで、1日前後※で完了。
  • コスト: API利用料は1件あたり約1~2円(文字数・使用LLMにより変動)。
  • 精度: 出力された情報の正答率は約90%(少数サンプルでの検証結果、n=65、2025年8月)。

比較として、Geminiのブラウザ版で同様の調査を試みた際の正答率は約52%に留まりました。Difyによるバッチ処理がいかに高精度であるかが分かります。

件数に応じて一定の時間は要しますが、90%近い精度で効率的に調査を実施できました。調査結果の用途にもよりますが、概要調査レベルであれば充分実用ラインと言えるのではないでしょうか。
(※同等のご支援をする場合は、ヒアリング・要件整理等の期間が必要になります。)

手のひらから光が放たれ、AIを経由してコスト・時間・精度などの成果が次々に繋がる、Difyによる高精度企業調査のイメージ

まとめ:AI活用の鍵は「適材適所」

今回は、AIを活用して大量の企業調査を自動化する方法について解説しました。

ChatGPTのような対話型AIは手軽に使えますが、大量のルーチンワークは苦手な場面があります。解決手法の一つとしてDifyのようなAI開発プラットフォームを組み合わせることで、低コスト・短時間・高精度で自動化できることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

重要なのは、AIの特性を理解し、目的に応じて適切なツールとワークフローを選択することです。単純な調査業務だけでなく、指示を変えれば様々な定型業務に応用が可能です。

紹介した仕組みは非常にシンプルなものですが、初めての企業がゼロベースでチャレンジするには苦戦する場面も多々あることでしょう。
株式会社テンダでは、お客様の業務課題に合わせたAIソリューションの導入支援を行っております。AIとRPAを組み合わせた業務効率化やDX推進などの事例もございます。ご興味がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。